自転車操業の教科情報実践報告
  その1 「私の年間計画」      

1. はじめに
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「何というタイトルやねん」と思わずつっこみを入れてしまいつつ,
「ニヤリ」と笑う先生方も多いはず。そう私を含めて情報科の先生方は
「明日は何を教えよう」という,「自転車操業」の先生方も多いのでは
ないでしょうか。

私は数年前,「新しい教科ができるんやって」と聞き,これは是非教え
たいと,社会科教員ながら,仏教大学の通信課程で情報科の免許を取得
しました。ところが新しい教科を教えるのはたいへん!なんせ自分も習
ったこともない教科をどうやって教えるねん!・・・と,日々格闘の毎
日です。そんな日常(ぼやき?)をある研究会で話したところ,同じよ
うに日々格闘しておられた京都女子高校の成瀬先生,明浄高校の今井先
生と遭遇し,お互いの実践を交換して,少しでも日常の授業のたしにし
ようということになりました。

今回はそんな日常の授業のたしを,メールマガジンで紹介させていただ
きます。お二人の先生はともかく,こんな私がえらそうに実践報告を書
くなんて・・・と思いながらも,これを書くことできっとみなさまから
いいアドバイスがもらえるはず・・・なんて期待もあって,今回から数
回に渡り,自分の授業実践を報告させていただきます。

第1回目は「私の年間計画」ということで,本校の情報Aの授業のねら
いと年間計画を紹介させていただきます。


2. 学校と情報科のカリキュラムの紹介
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本校は大阪の北部,箕面の山のふもとにあるカトリックの女子校です。
幼稚園から高校まであり,「1学年2クラスの小さな学校」が本校の売
りになっています。

情報科については2002年度より開講され,現在のカリキュラムでは,高
校1年で「情報A」2単位を必修,高校2年では「情報C」がコース必
修(3/4の生徒が選択),「情報B」も選択教科として開講していま
す。

教員は理科で免許講習を受けた先生が私の他にもう1名おり,高1・高
2の20名を超える授業については2名でTTを実施しています。


3. 授業のねらい
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昨年と一昨年の2年間,「情報」の授業を実践してみて色々なことに気
づきました。現在は次のようなことを大切にしながら授業を行っていま
す。

I)情報嫌いをうまない
生徒の興味を惹くことができなければ,いくら面白い内容を扱っても
生徒は聞いてくれません。生徒が関心をもち,役に立ちそうな課題を設
定することを工夫しました。「情報の授業はおもしろいし,役に立つ」
との声が目標!

II)コンピュータを学ぶのではなく,コンピュータを道具として使う
授業
「情報=コンピュータスキルの授業」ではない。コンピュータの操作・
しくみばかりを学ぶのではなく,これらを道具として使い,どうやって
情報収集・発信するかを学ばせたい。だから操作方法はできるだけ簡単
に,その後のそのスキルを使って行う実習に力をいれた。

III)でもある程度のコンピュータスキルは必要
情報を表現・まとめる上で必要な基本操作(具体的にはWordPower-
Point
Web作成など)は,道具として使う上でも必要です。何が基本で
何が応用なのか線引きが難しいですが,これらの操作については,短時
間で教える必要があると思います。

IV)最初に日本語入力になれさせる
コンピュータに対して苦手意識を持ってしまう生徒は少なからずいます。
その最初のハードルが日本語入力だと思います。どんな作業・実習にも
日本語入力は必要ですし,それが遅いと「授業についていけない」と感
じる生徒も出てきます。しかしこのハードル,越えることができれば生
徒はめっぽうコンピュータの操作に自信を持ちます。差がつきやすい領
域だけに,年度の最初に日本語入力の練習になる課題を入れるなど,地
道なフォローが必要だと思います。

V)座学的な内容も授業に入れよう
たとえばWebページを作るには,Webをつくるスキルだけでなく,著作
権・肖像権・個人情報の取り扱いなどの知識が必要となる。このような
座学的な知識も情報の授業では必要なことと思います。そもそも情報と
は何かを考えることをはじめ,著作権やネット上のトラブル,メディア
との関わりなど,コンピュータ実習だけではなく,情報化社会で生きて
いくために必要なことも教える必要があると思っています。

VI)発表・相互評価になれさせる
調べたことは必ず発表させ,作品は必ず相互評価を実施しています。
これは評価に慣れさせるためです。他人の作品を評価したり,また自分
の作品を評価することは,大学や社会では必要なスキルです。

まあ,こんなことを考えながら以下のような年間計画をたててみました。


4. 1年間の授業内容について
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(1)1学期編

I)タイピング練習+Wordで日本語入力練習
フリーのタイピングソフトで簡単な練習のあと,Wordでオリコンランキ
ングベスト20の歌・歌手名を入力させる。

IIWordで時間割作成
Word
の表作成機能・ワードアート・クリップアートを使って,学期始め
に役に立つ時間割を作成し,1部を提出,1部は自分たちでもってかえ
らせた。

III)情報って何だろう?
コンピュータ実習から離れ,朝から得た情報をあげさせ,情報源の種類
や特徴・そもそも情報ってどんなものかについてワークシートで考えさ
せた。

 【ワークシート(1):「身近な情報」】
(MS-Word) http://ikeda.nichibun.net/magazine/okamoto_sheet1.doc

IV)インターネットで情報検索
いくつかのマニアックなクイズを出題,インターネットを使って回答さ
せ,早い人はどのような検索方法をしたのかについて発表させ,考えさ
せる。

V)総合実習1「大阪案内ツアーを企画しよう」
「大阪に初めて来た友人を案内する日帰りツアーを企画」という目標で,
まずは紙ベースで企画・情報収集作業,次にWordで企画書作成,提出さ
せた。

VI)プレゼンテーションソフトを使おう
PowerPoint
の基本操作を説明し,そのあとで前回の「大阪案内ツアー」
の企画についてのプレゼンテーションを作成させ,そして発表,相互評
価させた。


(2)2学期編

I)雑誌風のインタビュー記事を書こう
インタビューの企画・準備を紙ベースで書かせ,その後インタビューを
実施,デジカメでの撮影,Wordの段組機能を使って雑誌風の記事にまと
め,相互評価を実施。

II)ネットワークの使用・マナー
インターネット・メールを使った犯罪,情報を発信する上でのマナー,
著作権について,ワークシートを使って実習を行った。

 【ワークシート(2):「インターネットをめぐる課題」】
(MS-Word) http://ikeda.nichibun.net/magazine/okamoto_sheet2.doc


IIIWebページの作成
ホームページビルダーーの説明を兼ねて,簡単な自己紹介のページをつ
くらせた。

IV)学校紹介のWebページを作ろう
他校のWebを研究し記録させ,それを参考に企画を紙ベースでさせる,
それをもとにWebページを作成,一人一人発表,相互評価を実施。


(3)3学期編

IExcelの活用その1「表計算ソフトは便利!」
印税の計算を電卓とExcelで体験させ,そのあと簡単な四則計算の式を
入力。

IIExcelの活用その2「表計算ソフトは表づくりも得意!」
オートフィルを使って簡単なスケジュール表を作成させ,幅や文字も装
飾。

IIIExcelの活用その3「自分の成績表をつくろう!」
各教科・各テストの成績表を作成し,平均・合計を関数で計算させる。

IVExcelの活用その4「グラフも簡単!」
III
のデータをもとにをもとに3種類のグラフ(折れ線,レーダーチ
ャート,積み上げ棒グラフ)を作成,そこからそれぞれのグラフがどの
ようなデータを表現するのに適しているかを考えさせ,ワークシートに
記入させる。

V)アニメーションを作ろう
フリーソフトを使って30コマ以上のアニメーションを作成,まずは紙
ベースで絵コンテ作成の上,制作,一人ずつ発表,相互評価。

VI)私のメディア史
ワークシートの年表を使って,今までの生活の中にさまざまなメディア
の影響があったことに気づかせ,情報化社会の中で生きる私たちの姿に
ついて考えさせる。

 【ワークシート(3):「私のメディア史」】
(MS-Word) http://ikeda.nichibun.net/magazine/okamoto_sheet3.doc


5. まとめ
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以上のように年間計画をたて授業を行ってきました。一応ねらいを意識
したものの,果たして教科書の内容を網羅しているのやら・・・?
(教科書会社サンごめんなさい!)

コンピュータのスキルだけでなく,それ以外のこともやりたいと,各学
期に座学的な内容をワークシートによる実習の形で実施しました。内容
はまだまだ不十分なものですが,次回はこれらの「ワークシートを使っ
た実習」について,書きたいと思います。


日本文教出版 教科「情報」メールマガジン 第55号(2004.6.4発行)掲載


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